とらおの有機化学

有機化学について考えるブログ

Criegee酸化は1,2-アンチジオールも酸化開裂できる有用反応

1,2-ジオールは、生体内での分子認識に欠かせない水素結合供与体であるアルコールを近接して持っていて、生理活性医薬品や機能性分子にも多く見られる官能基です。 ビシナルジオール(vicinal diol)とも呼ばれるこのジオールが隣同士で水素結合を形成できる…

過ヨウ素酸ナトリウムは1,2-ジオールの炭素-炭素結合を切断できる酸化剤

炭素-炭素結合は、有機化学のなかでも基本的な化学結合のひとつです。 多くの有機化学者がこの結合を作るために、何世紀も前から現在にわたって努力を続けています。 多くの炭素-炭素結合は化学的に安定であり、天然物など生物活動で使用される有機分子を形…

Pfitzner-Moffatt酸化はDCCを脱水剤とするDMSO酸化

Swern酸化に代表されるDMSO酸化には、活性化剤が異なる多くのバリエーションが知られています。 DMSO酸化が大きな酸化剤グループとなった理由に、DMSOの入手のしやすさ、値段の安さ、毒性の低さなどが挙げられると思います。 酸化クロムを用いるクロム酸酸化…

Evans-Tishchenko反応は分子内ヒドリド移動を利用したケトンの立体選択的還元

天然からは、長い炭素鎖上に一つ置きに2級水酸基が多数置換した天然物が単離されることがあります。 ポリケチドと呼ばれるこれらの有機分子は、その生合成においてアセチルCoAという生合成単位が、次々と連結反応を起こして形成されています。 連結直後はケ…

Tishchenko反応はエステルを合成可能なアルデヒドの不均化反応

分子の二量化反応は、一種類の化合物2分子が合体することによって、1つの新しい分子を形成する反応です。 シクロベンタジエンは有機合成でよく使われる合成素子ですが、単量体はそこまで安定ではなく、Diels-Alder反応が進行したダイマー(二量体)として…

Cannizzaro反応はヒドリド移動が可能にするアルデヒドの不均化反応

有機反応において通常の水素原子の移動は、プロトン(H+)としてある化学種から別の官能基へ移ることを指します。 例えば、酸触媒を用いたケトンのケタール形成では、酸素原子上をプロトンがうまく移動することによって、カルボニル基へのアルコールの付加と…

Oppenauer酸化はアセトンを酸化剤に用いる2級アルコールの酸化反応

有機合成において、アルコールの酸化は非常に発展した分野であり、数多くの有用な酸化法が開発されてきました。 それこそ覚えきれないほどの酸化剤が報告されているわけですが、酸化したい原料の環境に応じて最適な酸化方法は異なることが一般的です。 立体…

Meerwein-Ponndorf-Verley還元はイソプロパノールをヒドリド源とするカルボニルの還元反応

カルボニル化合物の還元反応には、水素化ホウ素化合物や水素化アルミニウム化合物に代表される金属ヒドリド錯体を使用するのが一般的です。 水素化ホウ素ナトリウムを初めとする、これら金属ヒドリド還元剤は取り扱い安さや試薬の当量コントロールの容易さな…

ヒドロホウ素化/酸化反応はanti-Markovnikov型で進行する水和反応

炭素‐炭素結合の中でも多重結合であるオレフィンやアセチレンは、有機分子の骨格構造にみられる基本的な官能基です。 多重結合に対して様々な反応試薬が作用することが知られていますが、代表的な分子変換に還元反応と酸化反応があります。 還元反応では一般…

水素化トリエチルホウ素リチウムは強力な求核力を有するSuperなHydride源

炭素の酸化度を低くする反応は還元反応と呼ばれますが、一般的には水素化を伴うことが多いですね。 アルデヒドやケトンなどのカルボニル化合物が還元されると、C=O二重結合の炭素に水素がついていくわけです。 カルボニル基に限らず、酸素や窒素などのヘテロ…