とらおの有機化学

有機化学について考えるブログ

Buchwald-Hartwigアミノ化反応は進化し続ける芳香族アミンの合成反応

医薬品や機能性材料など、人類にとって価値の高い有機分子を供給することは、有機合成化学の醍醐味のひとつです。 炭素-炭素結合を中心に構成される有機分子ですが、周期表で炭素原子の隣にある窒素原子との炭素-窒素結合(C-N結合)も非常に重要で、多くの…

鈴木-宮浦カップリングは汎用性ナンバーワンのクロスカップリング反応

パラジウム Pd を触媒として用いる炭素-炭素結合形成は、多様な原料の連結に使用されるなど、幅広い汎用性・一般性と高い反応性を併せ持ち、現代有機合成に欠かせない方法論となっています。 今回は、2010年にノーベル化学賞を受賞したことでも有名な、鈴木–…

向山酸化はスルフィンイミドイルクロリドが仲介するアルコールやケトンの酸化法

有機合成で使用される酸化反応は本当にたくさんあり、それこそ覚えられないぐらいの反応が開発されています。 ただし多くの酸化反応は、アルコールならアルコールだけ、ケトンならケトンだけ酸化する、といった専門領域が決まっています。 今回は、1つの試…

三枝・伊藤酸化はパラジウムの酸化力を利用したエノン合成法

飽和炭化水素であるアルカンは強いC-C単結合で構成された分子であり、生物界をはじめ、様々な有機分子の土台として利用されています。 近年、C-H結合の直接官能基化が爆発的に発展していますが、それでもやはり化学反応性に乏しく、分子を修飾するのには困難…

Davis酸化はオキサジリジンを利用した酸素原子導入法

カルボニル化合物から発生できるエノラートは、有機化学の大テーマであるC-C結合の形成で活躍してきました。 自然界に目を向けても、アセチルCoAに代表されるカルボニル化合物が、エノラートを駆使した生合成経路で活用されています。 アルドール反応やClais…

Rubottom酸化はカルボニルのα位に酸素原子を導入する酸化法

炭素-炭素二重結合であるオレフィンには、電子豊富なもの、普通のもの、電子不足のものといった電子的性質が異なるオレフィンがあります。 例えば、α,β-不飽和ケトンなど電子吸引性官能基が直結したオレフィンでは、隣接基の影響で二重結合を形成しているπ電…

Overman転位は[3,3]シグマトロピー転位を利用した窒素原子導入法

おしゃれな有機合成を目指すとらおにとって、離れたところにある立体化学情報を、別の位置の立体化学を作るのに転写するのは、魅力的な分子変換です。 加えて、元素の種類も思いのまま入れ替えられたら、さらにおしゃれ度がアップするわけです。 シグマトロ…

Luche還元は水素化ホウ素ナトリウム+塩化セリウムが可能にするエノンの1,2-還元

ランタノイドは原子番号57のランタン(La)から71番のルテチウム(Lu)までの原子の総称です。 ランタノイドの電子配置は、原子番号が増えるにつれて4f軌道に電子が入っていくことになりますが、最外殻電子である5d軌道と6s軌道の電子数が変わらないことが多…

Sandmeyer反応はアニリンを起点とする官能基導入法

有機合成において芳香族求電子置換反応は、置換基の少ない芳香環を修飾して多官能基化する有用な手法です。 いろいろな置換基を利用した芳香族求電子置換反応が開発されていますが、窒素原子がベンゼン環に置換したアニリンはその高い電子供与性のため、芳香…

Simmons-Smith反応はシクロプロパン合成の主力反応

環状炭素骨格の中でも最小単位であるシクロプロパンは、3つの炭素が三角形型に連結したものであり、バナナ結合とも呼ばれる折れ曲がったσ結合で三角形を作っています。 歪みのある分子骨格なので一見不安定に見えますが、炭素3つのシクロプロパン、酸素原…