とらおの有機化学

有機化学について考えるブログ

水素化トリsec-ブチルホウ素塩は大きな立体を武器とした還元剤

カルボニル化合物の中でもケトンの還元反応では、ケトン周りの環境によってヒドリドが接近してくる面により生成物が異なることがあります。 例えば、コンホメーションが制限されているシクロヘキサノンなどの還元では、生成物であるアルコールがアキシャル配…

トリエチルボランは低温でも活躍できるラジカル開始剤

従来、イオン反応に比べて発展が遅れていたラジカル反応ですが、近年多くの化学者の努力により、飛躍的に発達してきました。 不斉触媒を利用した分子変換も開発されるようになり、ますますその重要性を増しているラジカル反応ですが、最近の目覚ましい展開を…

AIBN系ラジカル開始剤で快適なラジカル生活

カチオン反応やアニオン反応などのイオン反応は、多くの有機反応の中に組み込まれており、多くの化学反応を実現しています。 一方で、不対電子を有する化学種であるラジカルは電気的に中性の場合が多く、イオン反応とは異なる様式の化学変換を達成してきまし…

Barton-McCombie脱酸素化は炭素ラジカルを利用した還元反応

Barton-McCombie deoxygenation / バートン-マクコンビー脱酸素化 基本的な官能基のひとつであるアルコール(水酸基)は、極性官能基として非常に重要であり、多くの有機反応や分子認識の足掛かりとなります。 しかしながらワガママな化学者は、時々このアル…

PDC酸化はほぼ中性条件で行えるクロム酸酸化

PDC酸化 多様な官能基を有する機能性有機分子の合成において、できるだけマイルドな条件で進行する反応は、官能基許容性の高さに直結し価値が高い反応となります。 アルコールを酸化する方法は数多く存在しますが、反応操作の用意さや試薬の値段・安定性など…

PCC酸化は酸性条件で進行するアルコールのクロム酸酸化

PCC酸化 重金属であるクロムを使った酸化反応は、再現性の高さや試薬の安さなど様々なメリットがあるため、長い間に渡り、多くのアルコールからカルボニル化合物への変換反応に使われ続けてきました。 二クロム酸を活性種とするJones酸化はその代表例ですが…

Jones酸化は酸化クロムを用いたオーソドックスな酸化法

近年では多くの化学者の努力により、多様な官能基変換を比較的簡単に達成できるようになってきました。 基礎的な化学反応のひとつであるアルコールの酸化は、アルデヒドやケトン、カルボン酸といったカルボニル化合物を得るために重要な反応です。 最近では…

オゾン分解は炭素‐炭素二重結合を切断する酸化開裂反応

炭素‐炭素二重結合は、σ結合とπ結合によって炭素原子が連結した状態であり、炭素‐炭素単結合よりも結合長が短く、強い結合と言えます。 仮にこの二重結合を切断しようとすると、先述のようにσ結合とπ結合の二つの結合を切らなければならず、大きなエネルギー…

水素化ジイソブチルアルミニウムは部分還元を可能にする汎用還元試薬

アート錯体であるLiAlH4やNaBH4は、アルデヒドやケトンを中心とするカルボニル化合物の還元反応に多用される有用な還元剤です。 一方で、二段階の還元を受けうるカルボン酸誘導体の場合、アート錯体型試薬を用いた還元では途中の段階で反応を制御することは…

ボランはカルボン酸を選択的に還元できる特殊な還元剤

カルボニル化合物の還元反応は、合成有機化学の中でも基礎的な反応のひとつです。 一般的に還元剤に対するカルボニル化合物の反応性は、酸塩化物>アルデヒド>ケトン>エステル>アミド>カルボン酸の順番で低くなっていきます。 つまり、ケトン存在下でア…