とらおの有機化学

有機化学について考えるブログ

Narasaka-Prasad還元は1,3-シンジオールを与えるジアステレオ選択的な還元反応

有機合成において、1つの原料から2つ以上の分子が創製できれば、機能性分子の性質改変や構造活性相関研究に役立ち、物質供給の多様性を広げてくれます。 たくさんの水酸基を有する天然有機物であるポリオール化合物の中には、ポリケチドのように生合成に由…

Saksena-Evans還元は1,3-アンチジオールを与えるジアステレオ選択的還元反応

隣接官能基を利用した有機反応は、原料に内在する官能基を足掛かりにして他の部分の官能基を狙い通りに反応させる、おしゃれな分子変換です。 最近では、アミドなどのカルボニル化合物を配向性官能基として利用したC-H結合の官能基化が発展し、もはや何でも…

Vilsmeier試薬はホルミル化・アシル化・塩素化に使える脱水剤

カルボニル化合物の中でもアミドは、最も反応性が低い官能基であると認識されがちな官能基です。 確かにカルボニル化合物に関する多くの有機反応が、求核付加、エノレート形成、加水分解に分類できるため、カルボニル炭素のプラスの分極が重要となります。 …

Baeyer-Villiger酸化はケトンをエステルに酸化する転位反応

カルボニル化合物のひとつであるケトンは、多くの機能性有機分子にみられる基礎的な官能基です。 Swern酸化やDess-Martin酸化などにより、2級アルコールから比較的簡単に合成することができますね。 通常のアルコール酸化剤ではそれ以上酸化されないため、…

ジチアンはアルデヒドを求核剤に極性転換させるカルボニル保護体

硫黄は周期表の第3周期の元素であり、炭素や酸素、窒素原子など第2周期とは異なる化学的性質を示します。 同じ第16族元素である酸素とよく比較されますが、とらおの理解を大雑把に言えば、価電子の数は一緒だが、化学反応に関わる軌道の大きさ(酸素:2s…

シアノヒドリンは増炭反応や極性転換に使える有用中間体

シアノヒドリンは、カルボニル基にシアン化物イオンが付加した化学種であり、アルデヒドやケトンなど反応性の高いカルボニル基の保護基として用いられる官能基ですね。 「梅干しの種を食べると死んじゃうよ!」って、子供のころ母親に脅された記憶があります…

Eschenmoser-Claisen転位は中性条件で進行する[3,3]-シグマトロピー転位

アリルアルコールから2炭素以上の炭素鎖伸長を実現できるClaisen転位は、新しく生成する炭素-炭素結合においてアリルアルコールの立体化学転写が特異的に進行するため、多くの有機合成に取り入れられてきました。 本当に素晴らしい分子変換反応では、より使…

Shapiro反応はケトンからビニル求核剤へ変換できる有用反応

有機化学に多く見られる官能基のひとつとして、カルボニル基であるケトンが挙げられます。 C=O二重結合を有するケトンは、炭素原子がδ+、酸素原子がδーとなっているため、カルボニル炭素は求核攻撃を受けやすい性質がありますね。 ケトンを利用した有機合成…

Ireland-Claisen転位はケテンシリルアセタールが活躍する[3,3]-シグマトロピー転位反応

立体選択的な炭素-炭素結合の形成は、欲しいものだけを作ることが要求される現代の有機化学において、とても重要な課題です。 とくに、2つ以上の立体化学が新しく形成される場合は、そのジアステレオ選択性の制御が最高難度に達し、とらおをはじめとして多…

Johnson-Claisen転位はオルトエステルが可能にする[3,3]-シグマトロピー転位

シグマトロピー転位は、二重結合や三重結合、あるいは芳香環など、π電子を含む多重結合官能基と隣接する単結合が電子の流れによって切れたり繋がったりする反応です。 シグマトロピー転位だけで長編ブログが書けてしまいそうなので、またそのうち取り上げた…