とらおの有機化学

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Curtius転位でカルボン酸からアミノ基へ直接変換

アミノ基は、医薬品をはじめとする多くの有機分子に内在する基本官能基の一つです。そのため立体選択的なアミノ基導入反応は、欲しいものだけを作ることが厳命されている現代有機化学において、非常に魅力的なものです。

今回は、カルボン酸から信頼性高くアミノ基へ変換できるCurtius転位(クルチウス転位、あるいはカーティアス転位)について考えていきたいと思います。

 

クルチウス転位はアシルアジドが可能にする立体特異的アミノ基導入

Curtius rearrangement-fig.1

 

Curtius転位は、カルボン酸から誘導されたアシルアジドが熱的、あるいは光化学的に分解反応を起こして、イソシアネートを与える反応です。

原料であるカルボン酸を酸塩化物や酸無水物として活性化後、アジ化ナトリウムやTMSアジドを作用させてアシルアジドを合成します。

近年では、より安全な試薬であるジフェニルホスホリルアジド(DPPA)が、カルボン酸からの直接的なアシルアジド合成に有用であることが見出され、スタンダードな方法として定着しました。

ヒドラジンを作用させて誘導できるアシルヒドラジンからも亜硝酸処理することによって、中間体のアシルアジドが合成できます。

 

アシルアジドを熱的あるいは光反応によって分解させ、窒素分子の放出を伴いながらイソシアネートが形成されます。得られるイソシアネートは単離することもできますが、水などの求核剤によってアミンに誘導されることが多いでしょう。

 

反応系内にLewis酸やプロトン触媒を共存させると、生成物の収率が向上する場合があるようです。これは、アシルアジドのカルボニル基が酸によって活性化され、転位反応が加速するためと考えられています。

 

協奏的な転位機構で立体保持

Curtius rearrangement-fig.2

中間体であるアシルアジドからイソシアネートへの変換反応は、かつてはナイトレン(nitrene)経由で進行すると考えられていました。

しかし、最近の研究により熱的な条件(thermal decomposion)では、ナイトレンは経由せずに協奏的に転位反応が進行すると提唱されています。

一方で、アシルアジドは光照射によっても活性化されることが知られています(photochemical conditions)。この場合のCurtius転位はナイトレンを経由して進行しますが、反応性の高いナイトレンの性質のため、望むイソシアネート以外の化合物も副生することが問題となります。

 

 

得られるイソシアネートは求核試薬との反応により様々なアミン誘導体を与えます。

例えば、水との反応により遊離のアミンが、アルコールの付加ではカルバメートが得られ、アミンを加えれば尿素誘導体を簡便に合成できます。

特にtert-ブタノール(t-BuOH)やベンジルアルコール(BnOH)を付加させるとBoc基およびCbz基(Z基)で保護されたアミン誘導体へ直接変換できるため、多くの合成ルートで活用されています。

 

Curtius転位の特徴は、1炭素失いながら(減炭)、立体保持(retention)でアミノ基を導入できる点です。2級アミンや3級アミンを立体選択的に合成するのは、それほど簡単ではありません。

前駆体となるカルボン酸誘導体を立体選択的に構築できれば、本反応の応用によって生成するアミノ基誘導体の立体化学を担保できるため、長い間合成化学者の信頼を勝ち得てきました。

 

まとめ

Curtius転位は1級、2級、3級、およびアリールアミンの合成に幅広く利用可能であり、非常に信頼性の高いアミノ化反応です。

この一炭素ジャマだなぁ、代わりにアミンが欲しいなぁって時は、本反応の出番ですよ。

 

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Hofmann転位は同じくカルボン酸からアミンを合成できる反応です。

Curtius転位の方がよく使われていますかね。

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 炭素の転位反応として、Wagner-Meerwein転位は基本型のひとつですね。

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こちらはアニリンを修飾するアゾカップリングに関する記事です。世界に彩りを与える化学製品のひとつです。

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