とらおの有機化学

有機化学について考えるブログ

Ireland-Claisen転位はケテンシリルアセタールが活躍する[3,3]-シグマトロピー転位反応

立体選択的な炭素-炭素結合の形成は、欲しいものだけを作ることが要求される現代の有機化学において、とても重要な課題です。 とくに、2つ以上の立体化学が新しく形成される場合は、そのジアステレオ選択性の制御が最高難度に達し、とらおをはじめとして多…

Johnson-Claisen転位はオルトエステルが可能にする[3,3]-シグマトロピー転位

シグマトロピー転位は、二重結合や三重結合、あるいは芳香環など、π電子を含む多重結合官能基と隣接する単結合が電子の流れによって切れたり繋がったりする反応です。 シグマトロピー転位だけで長編ブログが書けてしまいそうなので、またそのうち取り上げた…

Stetter反応はアルデヒドとα,β-不飽和カルボニルとの連結を可能にする極性転換反応

シアノヒドリンやジチアンから発生させたカルボアニオンは、求電子剤との反応後に脱保護することによってケトンを与えるため、アシルアニオン等価体と考えることができます。 アシルアニオンは、アルデヒドの水素原子が脱プロトン化されたカルボアニオンと見…

Benzoin縮合は極性転換を経由した芳香族アルデヒドの二量化反応

有機化学において極性転換(umpolung)を用いた反応戦略は、これまでの常識をひっくり返すインパクトを提供しうるものであり、化学者のこころをワクワクさせます。 極性転換は、ある官能基の通常知られている化学的な振る舞いとは真逆の性質を与えること、と…

Shiinaマクロラクトン化はMNBAを使った現在最高のラクトン合成法

化学反応では一般的に、他の分子との連結反応である分子間カップリングを行いたいときは、反応濃度がなるべく濃いほうが反応速度が速くなります。 これは溶媒の量が少ない方が、フラスコ内で相手方の分子と出会う確率(衝突する確率)が高くなるためと理解で…

Yamaguchiマクロラクトン化はラクトン合成の名盤反応

有機分子の中には、タンパク質などの生体内高分子に対して作用する生物活性分子が知られています。 標的タンパク質に相互作用する場合、水素結合や静電相互作用、疎水性相互作用など、特定の官能基がたんぱく質との親和性に重要な役割を果たしています。 し…

Corey-Nicolaouマクロラクトン化はピリジルチオエステルを利用したラクトン化

マクロライド系抗生物質は四大抗生物質の一つであり、医薬品において一大グループとなっています。 大きな環状ラクトンを特徴とするこれら一連の化合物が、人類の健康に果たしてきた貢献度は計り知れませんね。 ポリケチド合成酵素(PKS)によるマクロリド(…

Criegee酸化は1,2-アンチジオールも酸化開裂できる有用反応

1,2-ジオールは、生体内での分子認識に欠かせない水素結合供与体であるアルコールを近接して持っていて、生理活性医薬品や機能性分子にも多く見られる官能基です。 ビシナルジオール(vicinal diol)とも呼ばれるこのジオールが隣同士で水素結合を形成できる…

過ヨウ素酸ナトリウムは1,2-ジオールの炭素-炭素結合を切断できる酸化剤

炭素-炭素結合は、有機化学のなかでも基本的な化学結合のひとつです。 多くの有機化学者がこの結合を作るために、何世紀も前から現在にわたって努力を続けています。 多くの炭素-炭素結合は化学的に安定であり、天然物など生物活動で使用される有機分子を形…

Pfitzner-Moffatt酸化はDCCを脱水剤とするDMSO酸化

Swern酸化に代表されるDMSO酸化には、活性化剤が異なる多くのバリエーションが知られています。 DMSO酸化が大きな酸化剤グループとなった理由に、DMSOの入手のしやすさ、値段の安さ、毒性の低さなどが挙げられると思います。 酸化クロムを用いるクロム酸酸化…