とらおの有機化学

有機化学について考えるブログ

シアノヒドリンは増炭反応や極性転換に使える有用中間体

シアノヒドリンは、カルボニル基にシアン化物イオンが付加した化学種であり、アルデヒドやケトンなど反応性の高いカルボニル基の保護基として用いられる官能基ですね。 「梅干しの種を食べると死んじゃうよ!」って、子供のころ母親に脅された記憶があります…

Eschenmoser-Claisen転位は中性条件で進行する[3,3]-シグマトロピー転位

アリルアルコールから2炭素以上の炭素鎖伸長を実現できるClaisen転位は、新しく生成する炭素-炭素結合においてアリルアルコールの立体化学転写が特異的に進行するため、多くの有機合成に取り入れられてきました。 本当に素晴らしい分子変換反応では、より使…

Shapiro反応はケトンからビニル求核剤へ変換できる有用反応

有機化学に多く見られる官能基のひとつとして、カルボニル基であるケトンが挙げられます。 C=O二重結合を有するケトンは、炭素原子がδ+、酸素原子がδーとなっているため、カルボニル炭素は求核攻撃を受けやすい性質がありますね。 ケトンを利用した有機合成…

Ireland-Claisen転位はケテンシリルアセタールが活躍する[3,3]-シグマトロピー転位反応

立体選択的な炭素-炭素結合の形成は、欲しいものだけを作ることが要求される現代の有機化学において、とても重要な課題です。 とくに、2つ以上の立体化学が新しく形成される場合は、そのジアステレオ選択性の制御が最高難度に達し、とらおをはじめとして多…

Johnson-Claisen転位はオルトエステルが可能にする[3,3]-シグマトロピー転位

シグマトロピー転位は、二重結合や三重結合、あるいは芳香環など、π電子を含む多重結合官能基と隣接する単結合が電子の流れによって切れたり繋がったりする反応です。 シグマトロピー転位だけで長編ブログが書けてしまいそうなので、またそのうち取り上げた…

Stetter反応はアルデヒドとα,β-不飽和カルボニルとの連結を可能にする極性転換反応

シアノヒドリンやジチアンから発生させたカルボアニオンは、求電子剤との反応後に脱保護することによってケトンを与えるため、アシルアニオン等価体と考えることができます。 アシルアニオンは、アルデヒドの水素原子が脱プロトン化されたカルボアニオンと見…

Benzoin縮合は極性転換を経由した芳香族アルデヒドの二量化反応

有機化学において極性転換(umpolung)を用いた反応戦略は、これまでの常識をひっくり返すインパクトを提供しうるものであり、化学者のこころをワクワクさせます。 極性転換は、ある官能基の通常知られている化学的な振る舞いとは真逆の性質を与えること、と…

Shiinaマクロラクトン化はMNBAを使った現在最高のラクトン合成法

化学反応では一般的に、他の分子との連結反応である分子間カップリングを行いたいときは、反応濃度がなるべく濃いほうが反応速度が速くなります。 これは溶媒の量が少ない方が、フラスコ内で相手方の分子と出会う確率(衝突する確率)が高くなるためと理解で…

Yamaguchiマクロラクトン化はラクトン合成の名盤反応

有機分子の中には、タンパク質などの生体内高分子に対して作用する生物活性分子が知られています。 標的タンパク質に相互作用する場合、水素結合や静電相互作用、疎水性相互作用など、特定の官能基がたんぱく質との親和性に重要な役割を果たしています。 し…

Corey-Nicolaouマクロラクトン化はピリジルチオエステルを利用したラクトン化

マクロライド系抗生物質は四大抗生物質の一つであり、医薬品において一大グループとなっています。 大きな環状ラクトンを特徴とするこれら一連の化合物が、人類の健康に果たしてきた貢献度は計り知れませんね。 ポリケチド合成酵素(PKS)によるマクロリド(…